「前に座っていた子は流されちゃった。助かっても家が流された子が大勢いました」

台風による水害を経験された人の一言です。最近の水害映像を見ると不安になり、眠れなくなる。友達に話しても「あなたは心配性」といわれて、見捨てられたようなさみしさが襲ってきてしまい、最近は話題にできず、疎遠になってしまった。

60年以上前の経験にも関わらず、今でも雨風の大きな音でその時の夜に気持ちが戻されてしまうとのことでした。

ジャニーズ事務所の性加害問題。報道されるような災害と違い、個人の、しかも性に関する、人格を否定される出来事です。簡単に他人に相談できるものではなかったでしょう。「今になって」といった被害者へのバッシングもあるようですが、体と違い、何年たっても消えない、そして他人には見えないのが「心の傷」の特徴です。

この方には、毎回時間のゆるす限り不安を言葉にしてもらい、安心感をもって帰っていただくように心がけています。ジャニーズ事務所の被害を受けた（元）タレントさんも、報道では生活が乱れたり、自殺企図など精神的な不安定さを抱えながらの人生であったと報じられています。きちんとした治療を受けていられることを願わずにはいられません。

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患者さんのプライバシーに配慮し、一部修飾を加えています。