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はたしてカルテ内容とは「統一できるもの」なのか?

[2022.10.13]

マイナンバーカードの健康保険証利用開始が始まっています。その後紙保険証は廃止となる報道がなされました。総務省や厚労省の考えによれば、紙処方箋もいずれ廃止され、電子処方箋に移行、さらにその後は、医師が記載するカルテの内容を共通化し、全国の医療機関で同じ患者さんの電子カルテを共有・閲覧できるような仕組みが考えられているようです。

臓器別専門医にとって、臓器ごとの標準言語のようなものがあり、心臓であれば駆出率や動脈の流量、肺であれば呼吸機能や画像の陰影などの「臓器別専門用語」が医師同士で使われ、効率よく、短時間で多くの情報がやり取りされます。学会はさながら外国語のように専門用語が飛び交い、その単語を理解できなければ、内容は全く分かりません。(短時間で多くの情報をやり取りするには専門用語が一番効率的です)

臓器別ではない家庭医にとって、こうした共通言語はなかなか見つけられません。「薬の効かない不整脈患者」であっても、じつはその原因が親の介護であったり、子の不登校であったり、「医学ではない」領域の情報を聞き取り、標的臓器外の薬を処方することで症状が治ることもあったりします。

標準化ということは、コンピュータにとって、この情報はこの場所にしまうとルールを決めることです(コーディングと言います)臓器別専門医同士であれば、その言語のみ情報をやり取りできるとおもいますが、非専門医が専門医のカルテを見る場合や、はたして町医者のカルテを標準化できるのか?臓器ではない問題が病気の主体である場合、この情報をどこにしまうのか?本人が「主治医にしか打ち明けていない」情報を初診の医師が見えるようにするのか?個人的にはすこし心配しています。

医学はscience(誰でも同じ結果となる体系)ですが、art(人によって違う結果となる体系)の面も多く残っています。artが残る部分の記述を標準化することがはたしてできるものなのでしょうか?今後5年以内くらいには標準化されるともいわれていますが、英国などで先駆的になされている経験を十分検討して、日本に合うかたちでその方法が移植されることを願います。

 

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