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「一発で治る薬」の怖さ

[2023.02.07]

花粉症には「一発で症状が消える」薬があります。季節の初めに1回打てば、そのシーズンは症状が出ない夢のような薬ですが、現在の花粉症ガイドラインでは「推奨されない」扱いとなっています。「長期作用型ステロイド」に分類される薬剤ですが、これは糖尿病や骨密度の低下といった副作用があるため、(命に関わるほどの病状ではない)花粉症程度では使われない薬となりました。

「やせ薬ってないですか?」もよく聞かれます。「食欲を抑え肥満を抑制する薬」は実はあります。脳に働いて食欲を抑える効果がありますが、脳内での働きは「覚せい剤」とよく似た働きをするもので、向精神薬に分類される薬剤です(私は処方したことはありません)。高度の肥満にしか使われず、また、短期間しか使用を認められていません。

薬には様々な副作用や長期的なデメリットもあり、医師や薬剤師はそうした状況も見たうえで目の前にいる患者さんを診察しながら薬を使っています。患者さんの苦痛をスパッと治せたら…。「一発で治る薬」を一番欲しいと思うのは、実は我々医師でもあります。いろいろな情報が得られる時代になりましたが、かかりつけ医は「その場だけ」の関係ではありません。10年、20年先を考えて薬を選ぶとき、「一発で治る薬」はお勧めしないこともあるのです。

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追記

長期作用型ステロイド注射薬(デカドロン®等)を想定した記載でしたが、抗IgE薬(ゾレア®)も花粉症に適応がある注射薬でしたので追記します。ゾレアには、このような副作用はありません。ただし、非常に高価で、保険適応条件も厳しいため、現在のところ当院では採用していません。(命に関わるほどの病状ではない花粉症にこうした高価薬を適応承認することへの疑問もあります)「舌下免疫療法」を根治治療として推奨しています。

やせ薬についても、糖尿病治療薬であるインクレチンがネットで販売されています。インクレチンには食欲抑制作用はありますが、脳内依存作用は無いと思われます。保険適応外に薬を使うものなので、副作用が起きた場合などではその治療には保険が使えず、お勧めしません。

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