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健康と教育は成果主義にあわない

[2024.04.10]

診療報酬改定があり、患者さんへの「生活習慣病療養計画書」記載が求められるようになりました。

家庭医の外来では「タバコ」「塩分」「運動」と言った日常生活へのコメントを毎回すべての患者さんに必ずしていますが、これを文章にして、目標数値(体重や糖尿病の指数など)を決定し、患者さんからサインを求めるといった内容です。非常に手間がかかりますが、今までの医療の延長線上なので、診療内容が特に変わることはありません。

患者さんへの「プレッシャー」としてこうした目標設定を行う事はある層の患者さん(社会人として現役、退職しても働いている人など)には効果的かもしれません。しかしこれから増えていく高齢者の生活管理においてはあまりに画一的と言われざるを得ません。80歳を過ぎれば、食事制限より、何でも好きなものを食べて食欲を落とさないほうが健康寿命が延びるとの研究もあるほどです。目標を個別に設定することは賛成ですが、それを医療現場でサインまで求めて確認することに何の意味があるのか?はなはだ疑問です。

成果主義になりそうな匂いを感じます。行き過ぎると、達成数字に届かない患者が多い医療機関には保険点数が下げられるなど診療報酬上のインセンティブが生まれてしまうのではないか?そんな危惧を持っています。そうなれば、もともと健康意識の高い(いやなことばですが)「優良」患者のみを診て「不良」患者は診ないといった医療機関が増えそうな気がしてなりません。

不良患者にやる気を出させ、健康意識を高めていくことこそ、家庭医の真骨頂なんですが、そうした「予防医療」「医師の見えない努力」にこそ診療費は使われるべきではないでしょうか?測定が難しくともその方法こそ厚労省が研究すべき課題だと思います。

医療と教育には成果主義は適応すべきではない。このブログが杞憂であることを祈ります。

 

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