心の傷
[2021.03.11]
90代、「認知症」と言われている方の訪問をしていた時の事です。夜に興奮してご家族が困っているとのことでした。「B29の編隊が向かってくる、すぐ逃げないと」と。
普段は穏やかに会話をされる方で、興奮した姿などご家族も見たことのない方でしたが、認知症となり、抑制が外れてくることで、(家族にすら見せたことのない)蓋をしていた記憶がよみがえってきたのだと思われます。太平洋戦争が終わって75年、自分に戦争体験は無くとも、その話だけからでも、戦争の恐怖が伝わります。
震災から10年を迎えた3月11日
人が意図をもって攻撃してくる「戦争」とは比べるものではありませんが、目の前で大切な人や大切な場所が失われる経験は、やはり想像もできません。ですが、被災された高齢者の方がたとえ認知症になったとしても、その恐怖やくやしさを心の蓋が外れた状態で次の世代がみることができたなら、その感情はきっと伝わるのではないだろうか?
10年目で様々な震災報道がなされる中、心の傷を見通す難しさを感じています。
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患者さんのプライバシーを考慮し、実際の出来事を多少変更し記載していることがあります。