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自費PCR検査を受ける方に知っていただきたいこと

[2020.04.22]

有名通販マーケットで、新型コロナウイルスの自費PCR検査キットが販売されたようです。

法人向けとのことで、企業が買い求め従業員に検査を求めることもあるかと思われます。すでに売り切れのようで、引き合いも多いのでしょう。もし、外来でこのキットを使った結果をお持ちになられても、医師として自分はその解釈を全くできないと感じられたので、その理由をお伝えします。

どんな検査でも、偽陽性(本当は感染していないのに感染していると出る)、偽陰性(本当は感染しているのに感染していないと出る)が必ずでます。医師はその検査の限界も考えながら検査結果を解釈しています。保険診療に収載された検査については、その精度が公開され、検査会社では精度管理がかなり厳しく求められています。しかし、公開されたページでは、この検査の(特に影響の大きい)偽陰性率などについての記載は見られませんでした。

また、(20年ほど前になりますが)HIVの治療法がまだ無かったころ、その検査結果の告知についてのワークショップに参加しました。治療法がない病気の告知については、その検査の限界を含めた詳細な情報を、患者さんのわかる言葉で丁寧に伝え、そのうえでいくつかある治療オプションを「一緒に考える」ことが求められると教わりました。

このキットを作る会社は、「遺伝子検査」をセルフ検査できることで売り上げを伸ばしているところです。企業として消費者のニーズに応える商品を作ることは、ある面では正しいと思われます。しかし、医学情報といった「人生を左右する」情報を扱うのであれば、その結果についても、相談できるサービスとセットにし、オプションではなく基本料金にカウンセリング料も含めるべきではないかと感じました。仮に、結果のみを消費者に伝え、あとはかかりつけ医に相談、といった医療の使い方が許されてしまえば、日本が世界に誇る国民皆保険制度を疲弊させてしまうでしょう。

付記

現在行われているPCR検査は偽陰性が30%と言われています。1回のみであれば、実は10人の感染者のうち、3人は陰性と出てしまうような(精度の悪い)検査ですが、それ以外に調べる方法がないので採用されている状況です。なので、1回で陰性と確定にせず、2回連続で陰性が退院条件の理由です。

 

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