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心に蓋をする経験

[2020.01.17]

「先生どうしたの、なんで泣いてるの」

医局でお昼を食べていたら、突然同僚から声をかけられました。1月17日、テレビで「震災から1年」と題し阪神淡路震災から復興の様子などが映し出されているところでした。

自分でもなんで涙が出るのか、全く分からずきょとんとしていたのですが、徐々に感情が沸き上がって、誰もいない当直室で(恥ずかしいので)声を出さずに泣きました。

「とても怖かったんだよ!」、子供になった自分が叫んでいるような感情に襲われました。震災2日目に被害が大きかった長田区に入り、がれきの中を歩いた経験、このつぶれた屋根の下にもしかしたら人が埋まっているかもしれない、でも自分にはどうにもできない。明日地震が起きれば私も同じになるかもしれない。なんでこの人はつぶされて、私は助かっているのだろう。違いは何なのだろう?そんな感情が一気に襲い掛かってくるような、はじめての経験でした。

現場では、動かなければなりません。任された仕事を効率よくこなさなければ、「支援」に来た意味もありません。しかし、心は悲鳴を上げながら仕事をしていたのでしょう、「理性」が一生懸命「感情」を押さえつけてくれたおかげで仕事をしていたのだ。そう実感できました。そして、一年もたって、当時の映像がきっかけとなって、やっと感情が溶け出してきたのだと思えました。

心理学で言えば「PTSD:心的外傷」と言える状況を経験しました。

 

振り返って、戦争体験だとか、凄惨な事故や事件に巻き込まれた経験だとか、「言葉にすらできない」出来事は、時として容赦なく人の身に降りかかります。

なんでこんなことで泣いてしまうのか?、なんでこんなことで怒りを感じるのか?、自分の気持ちに自分で説明ができないときには、もしかしたら「心に蓋」をしているような経験があるのかもしれません。

早いもので、震災から25年が過ぎました。1月17日は特別な日なので、とても個人的な経験を書かせていただきました。

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