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人工呼吸器を操作するということ

[2020.03.29]

コロナウイルス関連で「人工呼吸器が不足」との記事を見るようになりました。

機械さえ手に入れば命が助けられるような「コメンテイター」の発言を見るたびに、違和感を感じています。一般の方には、機械さえつければ、あたかも飛行機の自動操縦のように、呼吸を肩代わりしてくれる機械のように見えるのでしょうが、「操作を学んだ人間」が扱わないと全く役に立たない機械です。

肺はスポンジのような臓器なのですが、それが軽石のように固くなる(病気によっては水をたっぷり含んで重くなることもある)変化が肺炎ではおきます。その部位や変化の範囲に応じて、また肺の損傷具合によって、気道にかける圧や呼吸回数、酸素濃度などを変えながら、体のダメージを最小限にしつつ治療につなげていくものです。また「自発呼吸」が残っていると呼吸が機械とぶつかってしまい換気効率が落ちるため、麻酔をかける必要もあります。血圧や尿量、全身状態を観察する医師の「腕」も問われ、研修医のころは怖くて全く手が出せなかった、上級者向けの医療機械なのです。

機械と薬は違います。呼吸器があっても習熟した医師が使わないとやはり命は助けられません。そうした機械を使わなければ助けられない患者さんこそ、病院の先生方が相手にするべきであり、それ以前の軽症患者さんの対応や鑑別が自分の役目だと思って診療にあたっています。

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