OTC類似薬の保険はずしに思うこと
OTC類似薬の保険適応はずしが議論されていると報道されました。いままで処方箋で出されていた薬で安全性が確認されたものをスイッチOTC薬(胃薬のガスター®やアレルギー薬のアレジオン®などが該当)といいますが、この議論では保険で出されている処方薬で市販されている場合は、処方箋側(OTC「類似」薬)の保険負担を外し、全額自己負担にするというものです。日本維新の会の猪瀬直樹議員などが以前から発言し、1兆円の削減を見越しているそうです。
これが通れば、たとえば花粉症で一般的に使われているアレジオン(成分名はエピナスチン)に保険が効かなくなりますので、医療機関にわざわざかかる必要がなくなります。これは日中働いている軽症で多忙な方・金銭的に余裕のある方には有効かもしれませんが、高齢者など1割負担の方、若くても重症なアトピー患者さんなどにとっては、大きな負担増になってしまいます。ほとんどの方には負担増になると思われます。
ただ、医療費の削減も待ったなしの状況です。日本では、気軽に医療機関を受診できることが当たり前になっていますが、世界ではそんな国の方が少数で、医療とは「お金がかかる」ことが常識になっています。医療費の4割が高齢者の支払いに使われているとの統計もありますが、今の制度のまま高齢化が進めば、いずれ日本が誇る医療の皆保険制度も崩れることが見えています。自分も含め、将来の高齢者には、「質の高い医療を誰もが平等に受けられる」ことは難しいと言わざるを得ません。実際、首都圏の中核市である柏にいると実感に乏しいのですが、地方ではすでに病院に当日かかることは(救急や夜間は特に)難しくなりつつあります。
この方法が果たして医療費削減に本当に有効なのか?実施するにしても、その薬剤や対象疾患を十分検討し、相応な時間をかけてから実施をすべきだと思います。いままで医療保険について受診者があまりに無自覚であった(当たり前すぎて誰からも教わっていない)時代は過去のものになりそうです。あまり知られてはいませんが、医師が必要と判断して処方や検査を行っても、保険審査機関が(保険診療上)過剰・適応外と判断された場合は、査定を受けます。その場合、負担は医療機関が肩代わりをする決まりとなっています。成分名を言ってしまうと語弊があるかもしれませんが(専門医にとっては必要な薬剤なので)たとえば鎮痛の湿布薬や総合ビタミン剤、一部の保湿剤などは保険はずしもやむを得ないかもしれません。しかし、一律に決めるのは避けて、例えば各科のせめて専門医が必要と判断した場合、数年以上定期的に通院している患者さんについては非専門医でも「かかりつけ医」の判断を優先してもらいたい。目の前で患者さんを診ている医師を信頼して判断を任せてほしい、個人的にはそう感じます。
