8月6日、ある小学1年生に起きたこと
10年以上昔、ある患者さんからお聞きした事です。
広島で被爆をされた時、小学校1年生だったそうです。
疎開先から被爆した家に帰るときに、近くのお姉さんが一緒に行ってくれた事。
家にたどり着く間、道を歩くと、手が伸びてきて、足をつかまれてこわかった事。
橋の下で被爆した母親は、体半分がやけどで、薬もない中で、暑くて
うじがわいて、とるときに血が出て、大変だった事。
川の中で死体が浮いていて、臭かった事。
その後も、娘や息子に恵まれたが、被爆2世とのことで、縁談にも影響があった事
兄弟がいたが、みな、癌死亡され、自分だけが残っている事。などを話していただきました。
静かにお話になっていましたが、これを私に語りだしていただくまでには、どれだけの精神的苦労があったのか、話を聞いた直後はそんな感想でした。
勤務を終えて家に帰ると、(当時)小学1年生の娘が食卓で振り返って「おかえりなさい」と言いました。その瞬間、ああ、今日聞いた話はこの子と同じ年なんだ。とその時初めて気づきました。そして、その瞬間、あまりの残酷さに身震いがおきました。
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子供はすでに大きくなり、この患者さんも亡くなられているかもしれません。ですが、話を聞いたときの自分の感情や子供の表情は今でもよく覚えています。
76年前の広島で起きたことを、わがこととして感じられた稀有な経験でした。