魚に海は見えない という話
病院に勤務していたころ、その環境が当たり前だと思っていました。24時間画像や検査をしてくれる専門職がいて、呼べば集まってくれて、すぐに結果が分かること、処置ができること。研修医はそうした環境で指導医から所見の取り方、データの読み方を学び診断のプロセスを磨いていきます。
先日、某・大学病院に緊急で患者さんを紹介する必要がありました。電話に出た若い先生から、臓器に関するデータを聞かれましたが、即日の数字ではない事、必要な検査項目が十分ではないことなどに不満がある様子が伝わってきました。町医者では即日ではなく翌日しか結果が出ない事、診断に必要十分なデータは集められない事、それでも、その数字を見て緊急と判断し、直ちに相談している事などをつたえました。やり取りの末、受け入れOKをもらいましたが、お礼を言う前に、電話は切られました。
私も研修医として病院にいたころは同じような態度であったかもしれません。
魚に海は自覚できません。ましてや在宅という診断装置すらない「陸」で医療が行われていることなど想像もできないでしょう。この先生もいずれはわかる日が来ると期待しています。
(ただ、どんなに忙しくとも、最低限の他者への尊敬は持っていてほしいと思います。その方が恰好いいです)