震災から30年
[2025.01.16]
阪神淡路の震災から30年が経ちました。
2日目の夜から長田入りした私は、倒壊した建物の近くでも作業をしていました。現場では懸命に働いていましたが、夜には「アスベストを吸い込んだかもしれないな」と思うこともありました。アスベストは建築資材として広く使用され、古い建物には特に多く含まれていました。その建物が壊れ果てている現場でした。
アスベストは、静かな時限爆弾ともよばれ、曝露から20年から40年で肺がんを発症するといった特徴があります。幸いなことに、現在でも私の肺の写真に異常はみられず、滞在も短期間でしたので吸い込んだ量も少なかったかもしれません。肺がんの発症が無いことを祈っています。
肺は、人生を記憶する臓器とも言われています。呼吸器診療の面白い点でもあり、難しい点でもありますが、通常治療で反応が悪い場合には詳細な病歴聴取が欠かせません。ボランティアで倒壊した建物付近で作業をされた方は、(治療に難渋するような場合には)そのことを医師に伝えた方がいいかもしれません。
個人的には、そうした不安を上回っても、震災現地での経験はその後の医師として大きな財産になっています。