検査用試薬での偽陽性の経験
先日、会社で配布された「抗原検査キット(検査用)」を使って陽性が出たとして、受診された方がおられました。
自覚症状があったため、保険診療として「抗原検査キット(医療用)」を使ったところ陰性でした。
診療上はこれで終了となりますが、私も患者さんも釈然としません。自費検査にご承諾いただけたので、即日で結果が分かるPCR検査を受けていただいたところ、やはり結果は陰性でした。当院での2回の検査、かつ、感度が高いPCR検査で陰性でしたので、会社で配布された抗原検査キットが偽陽性(本当は陰性なのに陽性と出る)であったと判断しました。このため、患者さんには出社に支障はないことを自信をもってお伝えできました。
「医療用キット」は感度と特異度が測定されており、感染状態との相関が結果に反映されるように調整されて出荷されています。一方「検査用キット」は、そうした精度が求められておらず、高感度すぎる、低感度すぎるなど、診断に足りる責任を持たせるにはやや不安のある検査材料となります。値段があまり安すぎる製品はそもそもコロナウイルス抗原タンパクをきちんと測定しているのかも不安です。
検体不足から、市販の検査キットでの判定、もしくは検査なしでの陽性判定も検討されているようですが、実際にこうしたケースを経験しますと、医療機関で信頼のおけるキットによる正確な判定が必要だと実感した出来事でした。