人生の満足度について再度考察
人は亡くなる時にどのような気持ちになるのでしょうか?
満足のいく人生となるのか、亡くなる間際まで後悔を残すのか?それを決める要因は何か?
いままで私が接してきた患者さんは、亡くなる時にはおおむね「満足のいく人生だった」とおっしゃる方がほとんどでした。(例外は若いがん患者さんで、お子さんや配偶者の行く末を案じておられました)
心理学者のエリクソンは、人の発達に応じて獲得する課題があり、それを乗り越えることで満足のいく人生につながるとの理論を提唱しています。(心理社会的発達理論)
「自分の人生に統一感を持ち、危機があってもそれを受け入れて、自分で人生を決めてきたこと」老年期にはそうした感情に至ることができれば満足のある人生につながる。個人的な解釈ですが、そう理解をしています。スティーブジョブズのスタンフォードでの歴史的な演説「Connecting Dots」にもつながる考え方です。
ここで重要なのは、金銭や地位といった「他者の評価軸」はまったく意味を持たないことです。どんなに苦しいことがあっても、その運命を受け入れ、自らの考え方やモノの見方を変えるような経験につながれば、その出来事は人生にとって「意味のある」ものになるのでしょう。
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筆者と同世代でデビュー当時から見守ってきた女性歌手、その娘さんが亡くなったとの報道がありました。
親子間の葛藤、親と比較される娘の悩み、子供を失う親の苦悩、活躍を見守ってきた同世代人として、自らの成長とも重ね合わせてその苦悩を想像してしまいます。起きたことは覆りません。考えたくもないほどの辛い経験ですが、この歌手が亡くなる時には、死ぬほどつらかったのだが、子供の死が教えてくれたこと、「自分の人生にとって意味のある出来事だった」との想いでいられるよう、そう願わないではいられません。